目次へ戻る

 

日本は米国に外圧を

20091114

宇佐美 保

 

 ちょっと驚き、又、“然(さ)もありなん”という記事を東京新聞(20091026日)に載っています。

 

 オバマ米大統領がノーベル平和賞に決定したことに不機嫌な反応を示す米国人の心情はどう理解したらよいのだろう。

 

 CNN世論調査では米国民の56%が「不支持」と答えている。ニューズウィーク誌は実績もない段階での授賞は無意味、と断じた。「官職にある者は外国政府から褒賞を受けてはならない」とする憲法条項をあげて「受賞は違憲」との極論さえある。

……

 七割の人が受賞に誇りを感じる、とも答えている。受賞決定後のオバマ氏支持率も上昇に転じている。米国人の真情はこちらにあると思いたい。

 

 

 そして、この記事を受けるがごとく朝日新聞(20091031日)には、次のインタビューが掲載されていました。

 

 

「世界がオバマ氏を助ける必要」 ノーベル賞委員長会見

 

 ……ノーベル賞委員会(ノルウェー)のヤーグラン委員長との主なやりとりは次の通り。

 

 ――今年のノーベル平和賞には世界が驚きました。

 

 米国大統領を選べば論争になると分かっていた。しかし、オバマ氏は世界の問題の解決に新しい道筋を示した。それを支持したかった。

 

 ――「早過ぎる」という批判がありました。

 

 授賞を2、3年後に延ばせば手遅れになる。オバマ氏一人ですべての事ができるわけではない。世界のすべての人が助けなければならない

 

 ノーベルの遺志では、その1年間にもっとも平和に貢献した人に賞が贈られる。それはオバマ氏だ。「オバマ氏は言葉だけだ」と言う人もいるが、言葉を過小評価してはいけない。言葉は時に危険だが、時に人に希望を与え、その希望が物事を良い方向に変える。

 

 

 ところが、日本の自民党議員やマスコミは、このような「ノーベル賞委員会」の思いを全く汲み取ることが出来ていないようです。

例えば、112日の衆院予算委員会のやり取りは次のような具合です。

(日経新聞:2009113日)


【普天間基地問題】
大島理森自民党幹事長 普天間基地移設問題について解決時期の目安を明示するのが首相の責任だ。
首相  いつまでに結論を出すということを申し上げる段階ではない。オバマ米大統領が来るまでに決めねばならないとは思っていない。しかし、できるだけ早く結論を出すことは日米関係にとって重要だ。
町村信孝氏(自民) 首相も外相も沖縄県外への移設と言っていた。
首相 選択肢を幅広く考えながら時間をかけずに、しかし調査に時間も必要だということで検討している。
町村氏

発言のプレがひどい。一言一言が軽い。

日米関係への影響を考えないといけない

首相 最終的に結論を出し、結論に従って閣内は行動する。今は選択肢がいろいろある。言葉にブレがあるとは思わない。合意プロセスを作り出す段階であり、閣内不一致ではない。
町村氏 外相は米空軍嘉手納基地への統合になぜ執着するのか。
外相 幕手納統合は早いというメリットもある。政府案ではなく私案だ。自分なりに(可能性を)見極めたい。
町村氏 いつまでに意見を集約するのか。
首相 決して引き延ばすつもりで議論をしているわけではない。様々な選択肢の中で必ず答えを出す。


 

 

 このような

自民党側からの質問は、米国のご機嫌を損ねたら大変と前ブッシュ大統領に唯々諾々として従ったポチの態度そのものです。

なのに、町村氏は次のように質問しています。



町村氏 日米関係は対等でないというが、どこが対等でないのか
首相 日本の外交は対米追従になっていた。イラクへの自衛隊派遣もそうだ。米国から強く言われるとその方向に日本の外交姿勢が変わらざるを得なかった。

 

 

 町村氏は、鳩山首相と同じ思いを今までに抱いたことはなかったのでしょうか!?

不思議でたまりません。

 

 

 産経新聞(2009.11.13)は次の記事を載せています。

 

……

 首相は記者会見で互いをファーストネームで呼び合う仲になったことを強調し「日米同盟をさらに深化、発展させたい」と語った。会談に至るまでには、なんとか米国の理解を得ようと腐心していた。

 

 政府は大統領来日を間近に控えた10日、5年で50億ドル規模のアフガニスタン支援策を発表した。現地の治安情勢悪化で具体的な支援策が詰められない中で、しぶる財務省を説得して「金額だけを膨らませた」(政府関係者)ものだ。

 

 これについて、首相は記者会見で「オバマ大統領からも基本的に、その支援に対しては感謝するという言葉をちょうだいした」と胸をなで下ろした。緊張していたのか、その直前に「バラク」と呼んだのを忘れたかに見えた。

 

 鳩山政権は、国際的な評価の高かった海上自衛隊によるインド洋での補給活動の中止を決めた。また、米国と合意していた米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市への移設も白紙に戻したことで、米国の不興を買っていることは十分意識しているようだ

 

 「オバマ大統領は分かっていただける人だ。心配はしていない

 

 首相は普天間飛行場移設問題について周囲にこう語り、平静を装っていたが、内心は冷や冷やものだったかもしれない。政権発足直後には、閣僚や政府高官から「政権が代わったのだから見直しも当然」とのセリフが飛び交ったが、いつしか聞かれなくなっている。

 

 「日本をアジアの最初の訪問国として選んでくださったことに、心から首相として、日本国民を代表して感謝を申し上げたい」

 

 首相は記者会見でこうも語ったが、日本では1泊しかしない大統領は、15日から訪れる中国では3泊し、若者との意見交換会にも参加する。言葉上だけでない日米同盟の再構築が今、求められている。(阿比留瑠比)

 

 

 この産経新聞は鳩山首相に対して非難がましく「米国の不興を買っていることは十分意識しているようだ」とか「平静を装っていたが、内心は冷や冷やものだったかもしれない」と書いていながら、「言葉上だけでない日米同盟の再構築が今、求められている。」と結んでいるのですから、全くおかしな記事です。

 

この産経新聞の結語通りに鳩山首相が「日米同盟の再構築」の為に、打々発止(ちょうちょうはっし)の議論を米国と戦わせるなら、当然、「米国の不興」を買うことも、「内心は冷や冷やもの」となることもある筈です。

頭を撫でられて尻尾を振るのとはわけが違います。

 

 

 そして、先に引用させて頂いた「ノーベル賞委員長」の“オバマ氏一人ですべての事ができるわけではない。世界のすべての人が助けなければならない。”との言葉の意味は、「世界のすべての人が」、オバマ氏の「ポチ」となることではありません。

 

 オバマ大統領の本心は、就任演説(読売新聞2009121日)の次の一節に見ることが出来ます。

 

 

 我々には、南北戦争や人種隔離の苦い経験があり、その暗い時代から出てきて、より強く、より団結するようになった。我々は信じている。古くからある憎しみはいつかなくなり、民族を隔てる線も消えると。世界が小さくなる中で、我々に共通の人間愛が現れることになると。米国が、新しい平和の時代に先駆ける役割を果たさねばならないと

……

 貧しい国の人々よ、我々は誓う。農場に作物が実り、きれいな水が流れ、飢えた体に栄養を与え、乾いた心を満たすため、ともに取り組むことを。我々と同じように比較的満たされた国々よ、我々が国境の向こう側の苦悩にもはや無関心でなく、影響を考慮せず世界の資源を消費することもないと言おう。世界は変わった。だから、我々も世界と共に変わらなければならない。

 

 

 このような思いを抱くオバマ大統領が、アフガニスタンから撤兵することなく、何故、逆に軍を増派しなくてはならないのでしょうか?

 

 雑誌『週刊金曜日』には、3号に亘って編集部の成澤宗男氏が「アフガニスタン戦争の内幕(上、中、下)」の記事を載せています。

 

例えば、2009.10.16号では、

 

 

911」前からあった作戦計画

二〇〇一年、「811」を口実にアフガニスタン戦争が始まった。

だが依然米軍は、勝利の見えない泥沼にあえいだままだ。そしてこの戦争の知られざる多くの事実は、破綻を目前にした米国の「対テロ戦争」の邪悪な本質を暴露している。

……

この作戦計画(筆者注:「不朽の自由作戦」)が再び表面化するのは、「911」の前日である。米国のテレビ局NBCが二〇〇二年五月一六日にニュース番組で報じたところによると、ブッシュ前大統領は前年の「911」前日である九月一〇日、アフガニスタンの「アルカイダに対する世界的規模の戦争に向けた綿密な計画書にサインすることになっていた」という。つまり911」を前にして、「不朽の自由作戦」がいつでも発動できる態勢にあったのは間違いない。

……

 

 2009.10.23号では、

 

なぜ「ビンラディン」なのか

多くの人々は、「911」を実行したオサマ・ビンラディンを捕まえるのが戦争の目的と考えている。

だが、FBIは「ビンラディンと『911』を結びつける証拠はない」と言明

米国政府もこれまでの約束を破り、一度もこの「証拠」を明示していない。

……

……四〇代前半の白人男性に、米国が始めた二つの戦争について聞いてみた。

「イラクでの戟争はブッシュのウソで始まったんだから、オバマも公約しているように軍は撤退すべきだね。

アフガニスタン? それは別だよ。

だって911″のテロを仕掛けたビンラディンという奴が、今でも山の中に隠れているんだから」──

 こうした認識は、民主党支持者の問では現在も一般的だろう。のみならずイラク戦争に反対する反戦運動の内部でも、一部はアフガニスタンでの戦争に反対しない立場を表明している団体もある。そこでは、オサマ・ビンラディン─911″テロ─「ビンラディンをかくまった」 タリバン、という図式が定着し、依然として「対テロ」という名目でアフガニスタン戦争がとらえられている

 そのオバマは当選して今年一月の大統領就任から時間をおかず、「ビンラディンとアルカイダは米国の安全にとって最大の脅威」と強調して、苦戦が続くアフガニスタンへの増派作戦を発表した。つまり第二次世界大戦を抜いて米国史上最長の戦争になり、勝敗がいつになったらつくのか不明なアフガニスタンでの戦いとは、突き詰めるとビンラディン、そして911″にしか根拠を有していない。だが、実はこの根拠自体が極めてあやしげなのだ。

 そもそも911″から八年以上経ってもビンラディンを捕捉できないどころか、その任務を帯びたCIAの部局が〇五年にすでに解散している不可解な事実がある。それだけではない。

 

 

 2009.10.30号では、

 

 

軍事植民地化の野望

911″も「ビンラディン」も、そして「タリバン」も「アルカイダ」も、戦争に関連づけられたすべての口実はまったくのデマにすぎない。

真の戦争の狙いは、米軍による世界支配実現に向けたアフガニスタンの軍事的植民地化にある。

……

 アフガニスタンはインド亜大陸などの南アジアと、中東に次ぐエネルギー地帯の中央アジア、そして同じく有数のエネルギー地帯であるイランの西アジアの結節点となる、特異な戦略的要所である。かつ米国にとっては、内海のカスピ海から産出するエネルギー資源をイランを避けてアラビア海へパイプラインで運び出せる唯一のルートを提供する。このため同じ見解は、石油資源と米軍の世界戦略を長らく研究している米国ジャーナリストのウィリアム・ユングダール氏も共有している。

 「米軍がアフガニスタンに居座っている理由は、アフガニスタン全土に恒久的な攻撃部隊を配置するためだ。

……そうした基地は、米国が狙う宇宙空問と世界の全空・海領域、全地上の支配(full spectrum dominance)にとって唯一妨げとなる二つの国(ロシア、中国)を標的とし、攻撃するのが目的となっている」

……

 

 

 オバマ大統領は、このようなアフガニスタン戦争の裏側を、成澤氏以上にご存知なのだと存じます。

そして、「就任演説」では、次の言葉を発している、オバマ大統領の本心は、イラク同様に、アフガニスタンから早期に撤退したい筈です。

 

……

世代から世代へと引き継がれてきた尊い考えを発展させるときが来た。尊い考えというのは、すべての人は平等で、自由で、あらゆる手段により幸福を追求する機会を与えられるという、神からの約束のことである。

 

 

その結果、次のような事態も発生するのでしょう。

 

……スクープジャーナリストとして知られるセイモア・ハーシュ元『ニューヨーク・タイムズ』記者は、集まった数百人の聴衆に、進行するただならぬ政府内の対立を暴露した。

 ハーシュ氏によれば、オバマ大統領はアフガニスタン戦線への四万人増派を要求するスタンレー・マクリスタル現地司令官をはじめとした軍と抜き差しならぬ対立に陥っている。

さらに軍高官は大統領の「弱腰」と「肌の色」に嫌悪感を露わにしながら、「大統領が困難に陥るのを望んで」おり、「ホワイトハウスと軍の戦争状態」が生じているという。

……

 

 

 従って、「ノーベル賞委員長」の“オバマ氏一人ですべての事ができるわけではない。世界のすべての人が助けなければならない。”との思いを実践するには、益々泥沼化するアフガニスタン戦争に肩入れすることではなく、その戦争の早期解決に力を貸すことです。

 

 なのに、自民党議員の感覚は次の質問で代表されるでしょう。


町村氏

インド洋での補給支援活動はなぜやめるのか。マニフェストにやめると書いたからか。

議員立法で活動延長のための法案を出すので賛成してほしい。

 

 

 この「インド洋での補給支援活動」は「対テロ戦争」の一環ではありませんか!?

私達日本人が、「世界平和を希求するオバマ大統領」を助けるのは「対テロ戦争」に協力することではありません。

逆に、反対すべきです。

今こそ逆に、米国に外圧をかけるべきです。

その欺瞞を暴くこと(今の米国自身では困難と思われる)に協力すべきです。

 

例えば、先の拙文《小泉元首相は「同時多発テロ」の証拠を開示すべき》にも記述しましたが、小泉元首相は「9.11のテロ行為とウサマ・ビンラーデン率いるアルカーイダとの関係」についての第153回国会(「国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会」:20011012日)で次のような答弁を行っております。

 

 

小泉内閣総理大臣
今回のテロ行為とウサマ・ビンラーデン率いるアルカーイダとの関係につき、昨日の審議の際にさらに御説明する旨申し上げたので、以下のとおり御報告する。
 一、政府は、日米首脳会談におけるブッシュ大統領の私への説明を初め、米国との累次の情報交換において説得力のある説明を受けている。その詳細を明らかにすることは、事柄の性質上、また、米国との信頼関係の観点からできないが、これまで米国政府首脳は、次のような発言を行っている。
  (一)九月二十日、ブッシュ大統領は、「我々がこれまでに集めた証拠のすべてが、アルカーイダとして知られている漠然と連携しているテロリスト組織の集団の関与を指し示している」旨述べている。
  (二)また、十月四日、ラムズフェルド国防長官は、「数千人を殺害した米国でのテロ攻撃にアルカーイダ・ネットワークが関与していたことは、全く疑いがない」旨述べている。
 二、十月四日、英国政府が公表した「二〇〇一年九月十一日の米国におけるテロ残虐行為の責任」と題する文書の中で、同政府は、ウサマ・ビンラーデン及び同人が率いるアルカーイダが、九月十一日の残虐行為を計画し、実行したとの明確な結論に達した旨述べている。……

 

 このような答弁を国会で行った小泉元首相を再喚問して、この答弁の真偽を問うべきです。

それでも、小泉氏が“その詳細を明らかにすることは、事柄の性質上、また、米国との信頼関係の観点からできない”と答えるなら、文書として提出を求めるべきです。

(その文書の公開は何年後と決めてでも)

 

 更には、

「アフガニスタン全土に恒久的な攻撃部隊を配置」とか、軍の力で世界を押さえ付けようとする既存勢力の排除に力を貸すべきです。

 

 その一環として、日本は、沖縄県民の悲願を叶えることにもなる米軍基地の完全撤退を求めるべきです。

 

その為には、80兆円とか言われている米国債を米国に提供しても良いのではありませんか!?

 

 何しろ、この米国債は、本来なら今売り払って、不況に苦しむ日本経済のテコ入れに使用してしかるべきお金であり金額です。

それが、思うに任せないのならいつまでも抱えていても(そのうちにドルが暴落して)紙屑となってしまう恐れもあります。

 

 ならば、その米国債を米国に譲り渡し、米国の景気回復の一助にもなるように考えてしかるべきではないでしょうか!?

目次へ戻る